新兴国を展开するイノベーション戦略

新兴国を展开するイノベーション戦略

潮目が変わる新興国での競争優位戦略 新興国展開を加速するためのイノベーション戦略

近野 泰沓掛 毅

CONTENTSⅠ　日本企業を取り巻く環境変化

Ⅱ　日本企業の課題

Ⅲ　新興国目線の新しいモノづくりの考え方

Ⅳ　日本企業の方向性

Ⅴ　新興国に進出する前提条件

要約1??日本企業を取り巻く環境は、今後の15年間で大きく変わる。2025年の世界の消

費動向を見ると、日本企業が得意としてきた先進国のハイエンドゾーンは、新たに生まれる新興国のハイエンドゾーンに量的にのみ込まれる。かつては大きくなかった新興国のローエンドゾーンが、規模的に無視できなくなる。2025年の製造業の生産規模を見ると、中国が圧倒的な世界ナンバーワンとなる。また、超低価格商品をはじめ新興国発の新たな発想の商品が出てくる。2??一方、日本企業は、かつてナンバーワンであった家電などはグローバルマイナーとなり、部品レベルでも負け始めている。価格より性能、機能、品質が重要な先進国市場で日本企業は強かったが、低価格が重要な新興国市場では太刀打ちできなくなっている。市場ライフサイクルで見ると、日本企業は、黎明期や成長前期は強いが、成長後期、成熟期、縮退期に存在感を失っている。3??今こそ、日本企業は、新興国目線でモノづくりを始める必要がある。欧米企業は、新興国から学ぶことをすでに始めている。日本企業も、新興国に学び、新興国発の視点で開発?生産を行う必要がある。さらに、あたかも新興国企業のごとく、新興国で開発した製品を先進国に逆流させたり、先進国と異なるビジネスモデルを新興国で開発し、他の新興国にも展開させたりする必要がある。4??これらの実践には強烈な意識改革が求められる。ローエンドの製品を基軸とした製品開発や、日本ではなくグローバルでの品質基準づくり、さらには経営自身が先頭に立って企業を牽引していく姿勢が求められる。

10知的資産創造／2011年11月号

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新興国展開を加速するためのイノベーション戦略

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てドクが、「日本製だ（だからダメなんだ）」といったところ、1985年から来たマーティが「日本製は最高さ」といい、ドクは「信じられない」と返している。

日本企業の製品も1955年当時は品質や機能ではなく、価格競争力が強みであったことを象徴しているシーンである。

2??急激に伸びる中国?インドを

??中心としたアジアの生産

経済産業省の「我が国の産業競争力に関す

るアンケート調査」によると、半数以上の企業が日本の工場の海外移転を検討している（図３）。

一方、新興国の生産は、日本国内の生産機能（工場）の海外移転による空洞化の懸念をよそに爆発的な伸びが予想されている。特にアジアの進展は目覚ましく、2025年には、04年比３倍の製造生産額を誇り、世界の工場と

なる（図４）。なかでも中国は米国を抜き第１位となり（日本は第３位）、インドも第５位に上がってくる（図５）。このように、製造業の主要市場は新興国へと移行していく。

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3??あふれ出る新興国発の

??超低価格商品

新興国での生産が盛んになると、先進国で

は考えられもしなかった商品が出てくる。

最近では、そこそこの性能ながら劇的に安

い５万円のネットブック「EeePC（イーPC）」、6400円の冷蔵庫「チョットクール」、8100円のデジタルカメラ「FinePix（ファインピックス）A170」、22万円の自動車「ナノ」などが新興国発で出現し始めている。

新興国展開を加速するためのイノベーション戦略13

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これら超低価格商品は、中国やインドなど新興国内の消費だけでなく、現実に先進国に輸出されており、日本にとって対岸の火事ではなくなっている。この動きは、日本企業のテリトリーである先進国市場の勢力図すら揺るがす可能性がある。

下が著しい。日本の御家芸であったテレビやオーディオなども例外ではなく、海外勢に侵食されている。一方、サムスン電子をはじめとするグローバル企業の躍進はとどまるところを知らず、さらに、中国など新興国企業も参入してきている。

Ⅱ 日本企業の課題

このような環境のもと、日本企業の地盤沈

1??世界で存在感をなくす日本企業

日本企業は、どの程度落ち込んでしまったのだろうか。

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